
古物商として事業を継続していく中で、拠点の集約や本店の移転に伴い、複数の営業所のうち「どこをメインの拠点にするか」を見直す場面が出てきます。
この手続きを「主たる営業所の変更」と呼びますが、実は単なる住所変更とは性質が大きく異なります。
最も注意すべきは、「引っ越しが終わってから報告すればいい」という思い込みです。
古物営業法において、主たる営業所の変更は「事前の届出」が義務付けられており、これに違反するとコンプライアンス上のリスクを抱えることになります。
本記事では、実務上の落とし穴を回避するためのポイントを解説します。
1. 届出期限は「変更日の3日前まで」
古物商の変更届 の多くは「変更から14日以内(事後)」ですが、主たる営業所の変更は「変更しようとする日の3日前まで」という、極めてタイトな事前期限が設定されています。
ここでいう「3日前」とは、変更当日と届出日の間に3日間を確保する「中3日」のスケジュールで動くのが、実務上最も安全です。
・具体例:月曜日に変更したいのであれば、前の週の木曜日には窓口で受理されていなければなりません。
・注意点:警察署の窓口は土日祝日が休みです。カレンダー上の3日前が休日であれば、さらに遡って平日に手続きを済ませる必要があります。
少しでも遅れると、窓口で「遅延理由書」の提出を求められたり、行政指導の対象になったりするため、移転が決まった段階で即座に準備を開始してください。
2. どこへ届け出るのか?(管轄警察署のルール)
手続きの窓口は、「現在の(変更前の)主たる営業所」を管轄する警察署の防犯係です。
例えば、現在「東京都新宿区」にある主たる営業所を「神奈川県川崎市」へ移す場合、まず向かうべきは移転前の新宿区の所在地を管轄する警察署です。移転前の管轄署へ届け出を行うことで、そこから移転後の管轄署へ情報が引き継がれる仕組みになっています。
3. 必要書類と「実務上の運用」
法令(規程)上の主な提出物は「変更届出書」と「許可証の本証」の2点ですが、実際の手続きでは、変更内容を裏付ける書類の提示を求められることがあります。
・法人の場合:履歴事項全部証明書(本店移転を伴う場合)、新しい営業所の賃貸借契約書の写しなど
・個人の場合:住民票(住所変更を伴う場合)
自治体や担当官によって「どこまでのエビデンスを求めるか」に細かな差があるのが実態です。事前に管轄署へ電話確認を行い、必要書類を確定させておくことが欠かせません。
4. ありがちな誤解:登記が終わってからでは遅すぎる
多くの法人の担当者様が陥るのが、「法務局での登記が終わってから、その謄本を持って警察へ行こう」という考えです。
登記完了を待っていると、古物営業法上の「3日前」という事前期限を確実に過ぎてしまいます。古物営業法上の手続きは、登記の手続きと並行し、まずは「予定」として警察への事前届出を先行させる必要があるのです。
失敗しないための確認ステップ
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カレンダーを確認:移転予定日から逆算し、土日祝を除いた「3日前」がいつか特定しましょう。
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警察署へ電話:現在の管轄署に連絡し、必要書類と窓口の予約を確認しましょう。
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許可証の原本を確保:書き換えのために本証を預けることになるため、その間の取引に備えてコピーを保管しておきましょう。
主たる営業所の変更は、期限のカウントや書類の準備において、非常にミスが起きやすい手続きです。特に管轄をまたぐ移転や、役員変更が重なるケースなどは、判断を誤ると許可の継続に支障をきたしかねません。









