会社が古物商許可を申請する手続きを徹底解説【法人で気をつけるポイント】

会社が古物商許可を申請するにあたっては、個人事業主が申請するのと異なる点がありますので注意が必要です。会社は定款が定める目的の範囲で事業を行うこととされていますので、この確認は重要です。また、役員すべての証明書類を取得し、内容を確認することが必要となりますので、特に規模が大きな会社では効率的な対応が求められます。

古物商許可申請の概要を解説

リサイクルショップや中古車販売店の営業を始めようとする際には、古物営業法第3条第1項の規定に基づき、都道府県公安委員会から古物商許可を受けなければなりません。古物営業法上の古物とは次の3つに該当するものをいいます。

【古物の定義】

  1. 一度使用された物品
  2. 使用されない物品で使用のために取引されたもの

(例)一度他人に譲渡された未使用の物品

  1. 1、2の物品に幾分の手入れをしたもの

(例)修理をして再使用可能になった物品

古物商許可は、古物の売買や交換を行う場合、または引き取った古物を修理して販売する場合に必要となります。また、オークション代行業のように、他人の依頼を受けて中古品をネットオークションに出品する場合もこの許可が必要です。ただし、個人がフリーマーケットやネットオークションで不要なものを処分するケースは許可が不要です。営業行為に該当しないからです。

古物商許可と古物の種類

古物営業法上、古物は13の種類に区分されており、古物商許可の申請ではこの中から実際に取り扱う古物の種類を選定することになります。また、申請にあたっては、主として取り扱う古物を選択しなければならず、これが下に示した標識に反映されることになります。たとえば、「道具類」を選択した場合、道具商という標識を営業所に掲げることになります。

警視庁のHPより)

  • ○○○商の下には会社名を記載することになります。

【古物の種類】古物営業法施行規則第2条による

古物の種類

(標識の表示)

分類の基準
①美術品類

(美術品商)

美術的価値を有する物品 書画、絵画、彫刻品、骨董品、刀剣など
②衣類

(衣類商)

繊維製品、革製品等であって、身にまとうもの 和服類、洋服類、その他の衣料品
③時計・宝飾品類

(時計・宝飾品商)

時計、眼鏡、宝石、貴金属などの外見的に有する美的特徴や希少性によって嗜好され、使用される飾りもの 時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類など
④自動車

(自動車商)

自動車及び自動車の一部品として使用される物品 自動車(部品を含む)
⑤自動二輪車及び原動機付自転車

(オートバイ商)

自動二輪車、原動機付自転車及びこれらの一部品として使用される物品 自動二輪車及び原動機付自転車(部品を含む)
⑥自転車類

(自転車商)

自転車及び自転車の一部品として使用される物品 自転車(部品を含む)
⑦写真機類

(写真機商)

プリズム、レンズ、反射鏡等を組み合わせて作った写真機、顕微鏡、分光機など カメラ、ビデオカメラ、レンズ、望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡、測量機器、光学機器など
⑧事務機器類

(事務機器商)

 

 

計算、記録、連絡等の事務に用いるために使用される機械及び器具 レジスター、パソコン、ワープロ、タイプライター、コピー機、ファックス、シュレッダー、計算機など
⑨機械工具類

(機械工具商)

 

生産、作業、修理のために使用される機械及び器具のうち、③~⑧に該当しない物品 電機類、工作機械、土木機械、化学機械、工具など
⑩道具類

(道具商)

他の分類に該当しない物品 家具、じゅう器、スポーツ用品、楽器、レコード、CD、DVD、おもちゃ、ゲームソフト、トレーディングカード、日用雑貨など
⑪皮革・ゴム製品類

(皮革・ゴム製品商)

皮革またはゴムから作られている物品 カバン・バッグ、靴、毛皮類、ビニール製やレザー製の化学製品など
⑫書籍

(書籍商)

本、雑誌、マンガ
⑬金券類

(チケット商)

商品券、乗車券及び郵便切手並びに古物営業法施行令第1条各号に規定する証票その他の物 商品券、切手、図書カード、クオカード、株主優待券、ビール券、乗車券、航空券、コンサートチケットなど

古物商許可が求められる理由と申請窓口

さて、古物の売買などの営業を行う際に、許可が必要とされるのはどのような理由からでしょうか。これは古物商許可の手続きが、警察署で行われることに関係があります。お察しのとおり、リサイクルショップや中古ブランド品を扱う店舗には、盗品が持ち込まれる可能性があります。盗品を流通させることは犯罪を助長することになるため、防止しなければなりません。

つまり、窃盗などの犯罪を防止すること、そしてその被害の迅速な回復を図ること、これが古物商を許可制としている理由です。犯罪に加担するおそれがある事業者に古物商の営業を許すわけにはいきません。

古物商許可は都道府県の公安委員会が許可権者となりますが、実際の申請は主たる営業所の所在地を管轄する警察署(生活安全課)が窓口となります。なお、ここでいう主たる営業所とは、必ずしも登記上の本店と一致するものではありません。あくまでも古物の売買などが営まれることになる店舗や事務所のことを指すものですのでご注意ください。

古物商許可に要する期間と費用

古物商許可を取得しようと思い立ってから実際に許可が出るまでの期間は、①管轄の警察署に書類を提出し、受理されるまでの期間と、②受理されてから許可が下りるまでの期間の2つに区分することができます。そして、②の期間は標準審査期間として目安が定められており、40日(休日を除く)とされています。

一方、①の期間(準備期間)は申請者側の事情によってまちまちです。後で解説するとおり、大きな会社ほど収集しなければならない書類が多くなり、時間がかかる傾向にあります。十分な準備期間の確保と効率的な対応が必要となるでしょう。ただし、この準備期間については、古物商許可の手続きに精通している行政書士事務所に依頼することによって短縮が可能になるものと考えます。

なお、古物商許可に必要な費用は、公安委員会(警察署)に支払う申請手数料と証明書類(住民票など)の交付手数料の合計額となります。申請手数料は19,000円と決まっていますが、証明書類の交付手数料は枚数によって合計金額が異なります。また、行政書士事務所に依頼する場合にはその報酬が加算されることになります。

会社が古物商許可の申請をする前に確認すべきこと

ここでは、会社が古物商許可の申請をする前に確認しておかなければならない事項について解説します。古物商許可では、役員全員が欠格事由に該当していないことの確認が重要です。そのため、役員の人数が多い会社では確認作業が煩雑になります。欠格事由には秘匿性の高い個人情報が含まれていますので、慎重な取り扱いが求められます。

また、会社が行う古物商許可申請においては、定款の記載内容の確認が必要とされます。定款とは会社のルールブックであり、会社には定款に記載された事業目的の範囲内での活動が要請されます。したがって、定款の目的に古物営業を営む旨の記載がなければ、許可を受けることはできません。

古物商許可の欠格事由(古物営業法第4条第1項)

古物商許可の欠格事由は古物営業法第4条第1項に列挙されています。これを1つひとつ詳しく解説することはこの記事では割愛しますが、役員(監査役も含む)の誰かが以下の事由に該当している可能性がある場合には、より詳しく調べてみる必要があります。そして、場合によっては、申請前に役員から外さなければならないことも想定されます。

  1. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  2. (罪種を問わず)禁固刑や懲役刑に処せられ、または無許可古物営業や名義貸しのほか窃盗、背任、遺失物横領、盗品譲受けなどで罰金刑に処せられ、その執行を終わり、またはその執行を受けなくなってから5年を経過しない者
  3. 暴力団員
  4. 暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
  5. 暴力団以外の犯罪組織の構成員で、強い虞犯性が認められる者
  6. 暴力団対策法第12条、第12条の4第2項および第12条6の命令または指示を受けた者であって、受けてから3年を経過しない者
  7. 住居の定まらない者
  8. 古物営業法第24条の規定により古物営業の許可を取り消されたものなど
  9. 精神機能の障害により古物営業を適正に営めない者
  10. 一定の未成年

また、会社自体が暴力団と関係があったり、古物商許可の取消処分を受けていたり、営業所ごとに管理者を選任しないと考えられたりするケースでも、欠格要件に該当することになり、許可を受けることができません。

定款の目的の確認

会社が古物商許可の申請をする場合、定款や登記事項証明書の目的の欄に古物営業をすることが読み取れる内容の記載がなければなりません。たとえば次のような記載です。

  • 古物営業法に基づく古物商
  • 古物営業
  • 中古自動車の販売

どのような文言が記載されていればよいのかの判断基準は、許可権者によって裁量に幅があります。不安がある場合には事前に申請窓口となる警察署に相談することをお勧めします。

会社の定款を変更する際には、定款で定められた手続きに則って株主総会を開催しなければならず、この手続きにも時間がかかります。なお、定款の変更は株主総会の特別決議によって効力が生じることとされています。定款の確認や変更は個人事業主の申請では不要ですので、会社ならではの注意点といえるでしょう。

古物商許可の申請前に決めておかなければならないこと

会社が古物商許可の申請をする際には、営業所と営業所ごとに配置する管理者を決めておく必要があります。ここでは、その選定にあたっての注意点を解説します。特に営業所については、確認書類として賃貸借契約書(写し)が求められる可能性がありますので、記載内容を把握しておきましょう。

営業所として認められるケース、認められないケース

営業所を選定する上で問題となるのが、店舗や事務所が賃貸物件の場合です。たとえば、役員の自宅を営業所として申請しようとする場合、賃貸借契約書の使用目的には「居住用」と明示されていることが多いかと思います。このようなケースでは、貸主や管理会社から事業用として使うことを許容するという内容の承諾書をいただくことが必要となります。

また、近年はレンタルオフィス、シェアオフィス(コワーキングスペース)、バーチャルオフィスといった新しい形態のオフィスが広がりを見せています。これらの形態のオフィスは古物商許可の営業所とすることが可能なのでしょうか。

この問いに対して直接的に説明している法令、ガイドラインはありませんが、一般的にいえば、他の事業者と区分されている専用スペースがあり、実際に業務をおこなうことができる状況にあれば、許可が受けられる可能性はあります。

逆にいえば、シェアオフィス(コワーキングスペース)は1つの空間(部屋)を異なる事業者で共有するものなので、古物商許可の営業所とすることはできません。また、バーチャルオフィスは物理的な実態を伴わないものであるため当然に許可を受けることができません。

先に述べたとおり、レンタルオフィスについては他の事業者と明確に区切られた空間があれば可能性はあります。しかし、契約期間が適切だと認められない場合には、営業所として認められないものと考えます。たとえば1日限りの契約期間だとすれば、当然に許可は難しいでしょう。

いずれにしても、レンタルオフィスのような新しい形態のオフィスで古物商許可を取得しようとお考えの場合には、契約書や図面を用意して、事前に申請窓口となる警察署に相談することをお勧めします。

営業所が複数ある場合の申請先

古物商許可の申請者が会社である場合、複数の営業所を設けることも考えられます。同一の都道府県内にとどまらず、他の都道府県にも設置することも想定できます。この場合、営業所ごとに異なる警察署での手続きが必要になるのでしょうか。また、都道府県をまたいで許可を受けようとする場合、それぞれの都道府県ごとに手続きが必要になるのでしょうか。

令和2年4月1日の法改正以降、古物商許可は全国で有効なものとなりました。したがって、他の都道府県にも営業所を設置するという場合でも、主たる営業所が所在する都道府県の公安委員会の許可を受ければ事足ります。つまり、新規での古物商許可の申請窓口が一本化されたということになります。

管理者として選任すべき者とは

古物商は営業所ごとに管理者を選任しなければなりません。管理者とは、平たくいえば店舗における店長のことをいいます。警察庁の通達「古物営業法等の解釈運用基準について」(令和6年8月14日丙生企発272号)では、管理者として選任すべき者の資格を次のように定めています。

「管理者は営業所における業務を統括管理して下位の従業者を指揮監督し、古物営業関係法令を遵守させて当該営業所等における業務を適正に実施させ得るものでなければならず、従業者を実質的に指揮監督する職にあるものでなければならない。」

なお、会社の代表者が営業所の業務を実質的に統括管理することが可能であれば、管理者との兼任も認められます。ただし、管理者は原則として営業所に常勤して管理者の業務に従事できる状態でなければならないことには注意が必要です。

古物商許可の申請では、管理者の常勤性を証明する書類の提出までは求められません。しかし、管理者の住民票上の住所と勤務する営業所の所在地までの距離が遠すぎる場合(通勤が困難な場合)には、追加の書類の提出が求められる可能性があるでしょう。

管理者に特別な知識・経験が求められるケース

警察庁の通達「古物営業法等の解釈運用基準について」(令和6年8月14日丙生企発272号)によれば、中古自動車やバイクを買い受ける古物商の管理者には、持ち込まれる物品が盗難車かどうかを見分けられる知識や経験が求められています。

具体的には、車体番号の打刻部分の改造などを判別できる知識・経験が必要であるとされ、3年以上の実務経験または講習の受講があればこの要件が満たされることとされています。ただし、これはあくまでも努力義務ですので実務経験がないと許可を受けられないわけではありません。

また、時計・宝飾品類を取り扱う古物商は、犯罪による収益の移転防止に関する法律の規定により特定古物商とみなされ、本人特定事項の確認義務や疑わしい取引の届出義務などが課せられます。そのため、特定古物商の管理者には、持ち込まれた時計・宝飾品類が本物かどうか、どれくらいの価値があるのかを鑑定できる能力が特に必要とされます。

会社が古物業許可の申請をする際の流れ【概要】

一般に会社が古物商許可を取得するまでのプロセスは、次のようなステップを踏むことになります。

  1. 事前確認・準備
  2. 警察署などへの事前相談
  3. 必要書類(添付書類)の収集・作成
  4. 申請書の作成
  5. 申請書・添付書類の提出

事前に確認すべきことはこれまでに解説してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。以下では、事前相談から申請書の作成、書類の提出までを詳しく解説していきたいと思います。

管轄の警察署への事前相談で確認すべきこと

新規で古物商許可を取得する場合、申請窓口となる警察署の担当者と事前に打ち合わせを行って疑問点の解消をすることは重要です。古物商許可が全国共通のものとなったとはいえ、都道府県ごとに独自のルール(内部基準など)が存在するからです。事前に確認・相談すべき点としては次のようなものが挙げられます。

  • 申請に必要となる書類について
  • 申請書の記載方法について
  • 営業所が適切であるかどうか
  • 申請手続きにかかる期間や流れについて
  • 許可後の営業上のルールについて

ところで、中古車販売の駐車場については警察署のみならず、市役所などへの事前確認が必要となるケースがあります。たとえば、市街化調整区域に車の展示場を設ける場合には、都市計画法や建築基準法上の制限を受けることになります。また、土地の地目が農地である場合には農地転用の手続きが別途必要になります。

なお、警察署に事前相談に行く際には、あらかじめ電話で予約を入れておくことをお勧めします。なぜなら、古物商許可の担当者が不在であることはよくあることだからです。

古物所許可申請に必要な書類を確認

会社が古物商許可の申請手続きを進めるにあたっては、必要とされる添付書類を取得し、これらをもとに申請書を作成することになります。申請書の住所や氏名は住民票など公的な書類のとおりに記載しなければならないので、申請書の作成に先立って証明書類(住民票など)を収集することが肝要です。早速ですが、収集すべき書類について一緒に確認していきましょう。

【添付書類一覧(会社の場合)】

区分 書類 注意事項
 

公的な証明書

①住民票の写し(住民票) 住所地の市区町村で取得
②身分証明書 本籍地の市区町村で取得
③登記事項証明書(履歴事項全部証明書) 法務局で取得
 

 

 

 

その他の添付書類

④(会社の)定款 会社保管の原本のコピーを提出
⑤略歴書(過去5年間のもの) 様式は任意(例示あり)
⑥誓約書 役員用と管理者用の区別あり
⑦URLの使用権限があることを疎明する資料 ホームページ利用取引を行う場合に必要
⑧賃貸借契約書など

 

営業所が賃貸物件の場合に必要(義務付けなし)
⑨委任状 代理人による申請の場合

H3①住民票の写し(役員・管理者全員分)

ここでいう「写し」とはコピーのことではなく、役所の窓口で交付された書類そのものを指しますので注意が必要です。窓口等で住民票の写しを請求する際には、次のようなことを明らかにする必要がありますのでここで確認してください。

  • 謄本(世帯全員分)なのか抄本(世帯の一部)なのか? → 抄本になります
  • 戸籍(本籍・筆頭者氏名)の記載が必要か? → 必要です

※   外国人の方については本籍ではなく、国籍が記載されたものとなります。

  • 個人番号(マイナンバー)の記載が必要か? → 必要ありません

住民票の写しを同一世帯以外の人が請求する場合には、本人からの委任状を必要とします。また、窓口での請求でも郵送での請求でも、委任を受けた人の本人確認書類の提示が求められます。住民票の写しの交付申請書や委任状のフォーマットは各市町村のホームページからダウンロードすることが可能です。

住民票の写しは役員・管理者の住所地の役所で取得しますが、役員や管理者が複数人いれば全員の分が必要です。なお、ここでいう役員には監査役も含まれます。漏れがないように十分ご注意ください。

②身分証明書(役員・管理者全員分)

身分証明書といえば「運転免許証」や「マイナンバーカード」を想像される方がほとんどだと思いますが、ここでいう身分証明書とはこれらのものとは異なります。必要なのは、本籍地の市区町村で交付される戸籍に関する証明書で次の記載がある書類です。

  • 禁治産又は準禁治産の宣告の通知を受けていない。
  • 後見の登記の通知を受けていない。
  • 破産の宣告を受けていない。

上記は、財産の管理能力・管理権限があるということを市町村長が証明するものであり、欠格要件の一部について該当しないことを示すものです。なお、この身分証明書は外国人の方には交付されませんので添付不要となります。役員・管理者全員分が必要なこと、役員には監査役も含まれることについては住民票と同様です。

③法人(会社)の登記事項証明書

ここで求められる登記事項証明書は「履歴事項全部証明書」で、一般に登記簿謄本と呼ばれるものです。間違える方はいらっしゃらないとは思いますが、「現在事項証明書(現在効力を有する登記情報)」ではありませんのでご留意ください。登記事項証明書は法務局で取得することになりますが、窓口で請求し交付を受ける以外にも、郵送による請求、オンラインによる請求が可能です。

登記事項証明書には、本店の所在地や役員に関する事項(履歴)が記載されています。ここで注意すべきなのは、これらの記載内容が現状と一致しているかどうかです。役員が変わっているのにそれが登記事項証明書に反映されていないような場合には、申請書に記載する内容との整合性がとれなくなります。この場合、役員変更登記が必要になります。

これまでに解説した住民票、身分証明書、登記事項証明書は役所が発行する公的な証明書ですが、これらの書類の有効期間は3か月です。書類を取得してから申請までの期間が3か月を超えてしまうと、取り直しが必要となりますのでお気をつけください。

④法人(会社)の定款

定款とは、会社の基本的事項や運営のルールなどを定めた重要な文書で、設立時に作成されます。株式会社の場合、設立時に作成された定款(原始定款)は公証人の認証を受けることとされています。定款の原本は会社に保管されており、古物商許可の申請時には、その写し(コピー)を添付書類として提出することになります。

定款の写し(コピー)を提出する際には、原本証明を求められることが通常です。原本証明とはコピーが原本と同一であることを証明するために行うもので、末尾の余白に次のような一文を記載し会社の代表印を押印することになります。なお、定款の目的に古物営業または古物商を営むという内容の記載が必要であることは前述したとおりです。

【原本証明の例】

この定款の写しは、原本に相違ありません。

令和〇年〇月〇日

株式会社古物商会  代表取締役 ○○ ○○ 印

⑤略歴書(過去5年間の経歴を記載)

監査役を含む役員全員、そして営業所の管理者の過去5年間の職歴(学歴)が記載された書類で、申請者が作成するものになります。法令で規定された様式はありませんが、各都道府県の公安委員会のホームページ上で記載例が例示されていますので、これに沿った書き方をするのがよいでしょう。

下の記載例は警視庁のホームページから転載したものです。なお、略歴書は原則として押印不要です。

注意すべき点としては経歴に空白の期間を作らないことです。無職の期間がある場合は、正直に「無職」と書くことになりますが、これが許可の審査に影響を及ぼすことはまずありませんのでご安心ください。なお、ウソの経歴を書いてしまうと虚偽申請となり、罰則が科せられる可能性もありますのでお気をつけいただきたいと思います。

⑥誓約書(役員用及び管理者用)

役員及び管理者が古物営業法で規定されている欠格事項に該当していないということを、本人自身が許可権者(公安委員会)に対して約束するという内容の書類です。誓約書のひな型は各都道府県の公安委員会のホームページからダウンロード可能です。印刷して、日付・住所・氏名を記載してください。原則として押印は不要です。

なお、誓約書は役員用と管理者用が異なるものになっていますので、取り違えのないように注意しながら、それぞれについて作成する必要があります。役員が管理者を兼ねる場合にも、1部ずつ準備することになります。

⑦URLの使用権限があることを疎明する資料

ホームページを利用して古物の取引を行う場合には、申請書でURL(ウェブサイトのアドレス)を届けることとされていますが、このURLを使用する権限があることを示すための資料が添付書類として必要になります。大阪府警のホームページによれば、次のようなものがこれに該当します。

  1. プロバイダ等からのドメイン割当通知書等の写し
  2. インターネットでドメイン取得サイトにある「ドメイン検索」「WHOIS検索」を実施し、検索結果の画面を印刷したもの

1,2のいずれの場合も「法人名、法人の代表者名」等が当該ドメインに登録されていることが確認できる内容のものであることが必要です。また、ドメインの登録者名が法人代表者や業務担当者と異なる場合は、登録者から使用承諾を受けていることを明らかにするため、URL使用承諾書も添付することになります。

申請者にとって、手元にある資料が疎明資料として認められるかの判断はなかなか難しいものと考えます。ホームページ利用取引をお考えの方は、事前相談の段階で窓口となる警察署の担当者に確認してもらうのが賢明でしょう。

⑧賃貸借契約書、使用承諾書など

従来、営業所が賃貸物件の場合、賃貸借契約書の写しの提出は必須のものでした。しかし、現行の運用では、この書類の提出が原則不要となりました。実際に、ほとんどの都道府県の古物商許可のページの案内をみると、必要な添付書類の中に賃貸借契約書の記載がありません。

しかし、使用権限がなかったり、シェアオフィスやバーチャルオフィスのように営業所としての独立性がなかったりすれば、営業所の適格性を欠く状況となります。

そのため、警察署によっては「任意で」賃貸借契約書の提出や提示を求められることがあります。また、審査期間に営業所の現地調査を行う警察署もあります。仮に古物商許可が下りたとしても、貸主とのトラブルなどにより、営業ができなくなるというおそれもあります。こうしたことを考慮すると、必須のものと捉えた方がよいのではないかと思います。

申請書作成上の注意点を確認

古物商許可の申請書は法令によって様式が規定されているため、全国共通の「書き方」をすることになります。大阪府警が公開している記載例を見ながら、注意すべき事項を一緒に確認していきましょう。なお、申請書については、警視庁のこちらのページからもダウンロードすることができます。なお、申請書についても原則として押印は不要です。

別記様式第1号その1(ア)

 

申請書の第一面で、取得する許可の種類と申請者(会社)の名称・住所及び代表者の氏名・住所を記載するものです。会社の名称と住所については、登記事項証明書のとおりに記載してください。ここでいう会社の住所は、登記上の本店所在地を指します。また、代表者の住所と氏名については、住民票のとおりに記載することになります。

注意すべきは申請日です。この日付については空欄のままで書類を警察署に持参し、担当者の確認を受けた後にその場で記載するのが通常です。また、申請先は、あくまでも主たる営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会です。本店所在地と主たる営業所の所在地が異なる場合は注意が必要です。

別記様式第1号その1(イ)

様式その1(イ)は、会社の役員が複数いる場合にのみ使用します。会社の代表者(代表取締役)の住所・氏名についてはその1(ア)に記載しているため、ここには記載する必要はありません。

別記様式第1号その2

 

様式その2は主たる営業所の名称・所在地・取り扱う古物の種類、そして営業所の管理者の氏名・住所について記載するものです。次の点について注意しながら書類を作成していきましょう。

  • 営業所の名称(店舗名)を定めない場合は、会社名の記載でも構いません。
  • 営業所(店舗)が賃貸物件の場合、賃貸借契約書に合わせて建物名や部屋番号まで記載します。
  • 取り扱う古物の種類は、メインで取り扱う古物(様式第1号その1で選択したもの)に加えて、取り扱うすべての古物の種類を選択します。
  • 管理者の電話番号は、携帯電話の番号などの個人の電話番号(常時連絡がとれるもの)を記載します。
  • 会社の役員が管理者を兼ねる場合には、当該役員の氏名住所などをここにも記載します。

別記様式第1号その3

様式その3は、主たる営業所以外の営業所の情報を記載するものです。したがって、複数の営業所を設置する場合にのみ必要となり、2つの営業所を設置する場合は1部、3つの営業所を設置する場合には2部作成します。

なお、その他の営業所の所在地が主たる営業所の所在する都道府県以外の都道府県にある場合でも、様式その3に記載することにより、同一の申請書で申請することができます。

別記様式第1号その4

様式その4は、ホームページ利用取引を行うかどうかを示すために作成するものです。ホームページを利用する場合には、1.用いる を選択し、そのページのURLを記載します。一方、ホームページ利用取引を行わない場合には、2.用いない を選択します。ホームページを利用しない場合であっても、様式その4の提出は省略できませんのでお気をつけください。

警察署に書類を提出してから許可が下りるまで

申請書と添付書類が揃ったら、いよいよ管轄の警察署へ書類を持参し、担当者のチェックを受けることになります。まずは警察署に電話を入れて、提出の日時を予約しましょう。会社の従業員が書類を提出する際には、社員証の提示が求められますのでご準備ください。なお、行政書士が代理で手続きを行う場合には、委任状の提出が求められます。

書類の提出時には書類の形式的なチェックのみが行われ、申請内容が事実かどうかなど内容に踏み込んでの審査が行われることはありません。しかし、書類に書かれていることの説明ができるくらいの準備は必要でしょう。また、申請書については副本(原本のコピー)を作成して持参し、受付印を押してもらっておくとよいでしょう。

また、書類の提出の際には申請手数料の19,000円を収入証紙などによって納入することになります。古物商の標準審査期間(許可が下りるまでの標準的な審査期間)は書類が受け付けられてから40日です。ただし、この40日には書類の補正に要した日数や土日祝日の日数は含まれません。

この約40日の審査期間の間に、役員や管理者が欠格要件に該当していないかの確認、そして営業所の実態の確認などの審査が実施されます。営業所の確認については、警察官による現地調査が行われることを想定しておく必要があります。なお、営業所の適格性については先に解説していますので、もう一度読み返してみてください。

まとめ ~古物商許可で会社が気をつけるべきポイント~

  • 会社は法律によって人と同じような権利と義務を認められた組織・団体であり、定款で定められた目的に従って事業を行うこととされています。したがって、定款の目的に古物商を営むという趣旨の記載がなければ古物商許可が取得できません。
  • 会社は個人事業主と比較すると、組織が大きくなる傾向があります。そのため、役員の数や営業所の数も多くなる場合が多いです。会社の規模が大きければ大きいほど、証明書類の収集や記載内容の確認に時間がかかるため、古物商許可の手続きが煩雑になります。

古物商許可の申請をしようとお考えの会社、特に規模の大きな会社では、上記の点を特に注意しながら、効率的に手続きを進めていく必要があります。なお、許可までの期間を短縮したいとお考えの場合、確実に許可を取得したいとお考えの場合には、当法人に申請手続きの代行をご依頼いただければと思います。

許可申請の代行に関するご相談
「古物商許可のホームページを見た」とお伝えください
東京
03-5843-8541
電話受付 平日9:00~18:00
神奈川
044-322-0848
電話受付 平日9:00~18:00

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