
会社の名前(商号)を変更した際、法務局での登記手続きが無事に終わると、つい一安心……としてしまいがちです。しかし、古物商の許可をお持ちの企業様にとっては、そこからが本当の正念場といえます。
法人の名称変更は、変更があった日から「20日以内」に届け出ることが義務付けられています。ここで実務上、もっとも注意しなければならないのが期限の起算点、つまり「いつから数えて20日なのか」という点です。
1. 期限の落とし穴:登記完了日ではありません
多くの担当者様が「登記が完了して、新しい謄本が取れるようになった日」から数えてしまいがちですが、これは間違いです。正しくは、履歴事項全部証明書に記載される「変更年月日」から数えて20日以内です。
法務局の手続きには、申請してから完了するまで通常1週間から10日ほどかかります。もし「登記が完了してから準備を始めよう」とのんびり構えていると、警察署への提出期限まであと数日しかない、あるいは気がついたときには既に期限を過ぎていた……という冷や汗をかくような状況に陥りやすいのです。
2. 屋号(店名)も変える場合は「事前届出」が必要
もし社名変更に合わせて「お店の名前(営業所の名称)」も変える場合は、さらにパズルのようなスケジュール管理が求められます。警察のルールでは、営業所の名称変更は「変更する日の3日前まで」に届け出ることが原則とされているからです。
つまり、社名の変更は「後から(事後20日以内)」でいいのですが、店名の変更は「先に(事前3日前まで)」済ませておかなければならない、というタイムラグが発生します。この二つの異なる期限を同時にクリアするのは、慣れていないと非常に煩雑です。
3. スムーズに手続きを終えるコツ
事後の変更届出には、新しい内容が反映された履歴事項全部証明書(登記簿謄本)を添える必要があります。 登記が完了したその日にすぐ履歴事項全部証明書を取得し、そのまま警察署へ直行できるくらいの準備をしておくのが理想です。あらかじめ変更届出書や書換申請書のドラフトを作成しておき、あとは法務局で取得した履歴事項全部証明書をセットするだけの状態にしておくことが、期限を守るための最大の秘訣といえるでしょう。
現場でよくある3つの誤解
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「登記完了日から20日あれば余裕」という思い込み 起算点はあくまで「変更年月日」です。法務局での審査期間を差し引くと、実質的な猶予は驚くほど短くなります。
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「社名が変わっても許可証はそのままでいい」は間違い 。社名名が変われば許可証の「書き換え」が必要です。書換申請には手数料(1,500円)がかかり、許可証の原本を窓口へ持参する必要があります。
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「営業所の名称変更も20日以内でいい」という勘違い 前述の通り、営業所の名称・所在地については「事前届出」が義務付けられています。事後でよいのは法人名称や役員変更など、登記事項に関わる一部の項目に限られます。
失敗しないための具体的な進め方
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日付の確認:株主総会議事録等で決定した「商号変更の日(効力発生日)」をカレンダーに記す。
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事前届出の実施:営業所の名称(屋号)も変わる場合は、変更日の3日前までに警察署へ届け出る。
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登記申請と書類準備:法務局へ商業変更登記申請を行い、完了予定日を把握。法務局への変更登録申請と同時進行で、警察署への書換申請書を作成しておく。
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履歴事項全部証明書取得と提出:登記完了後、法務局にて履歴事項全部証明書を取得し、許可証の原本とともに警察署へ提出する。
商号変更に伴う古物商の手続きは、登記の完了を待っていると「時間との戦い」になりがちです。たかが届出と思われるかもしれませんが、期限を過ぎてしまうと理由書の提出を求められるなど、余計な手間が増えてしまうこともあります。
「社名が変わる」という大きな節目に、許可手続きの遅れでつまずかないよう、事前のスケジュール確認を大切にしてください。
もし日々の業務に追われて手続きが不安な場合は、専門家である行政書士へ変更手続きを依頼するのも一つの手です。
確実な手続きで、新しい社名でのリスタートをスムーズに切りましょう。









