
新しい店名への変更は、ブランドイメージを一新し、心機一転スタートを切る絶好の機会と言えます。しかし、看板のデザインやチラシの刷り直しに気を取られている間に、ある重大な義務を失念してはいけません。
それは、警察署への「事前」の届出です。
古物営業法において、営業所の名称変更は「事後の報告」では認められないのが鉄則です。たとえ店舗の場所が変わらなくても、店名を変えるだけであれば、新しい名称で営業を開始する日の3日前(土日祝を除く)までに、現在の管轄警察署へ書類を提出し、受理されている必要があります。
もし届出を忘れたまま新店名で営業を始めてしまえば、法的には「無届けの営業所」で取引を行っているという、極めて危うい状態を招きかねません。ブランドの門出に不必要なリスクを残さないためにも、特に法人の皆様が陥りやすいルールの罠を整理しておきましょう。
1. 法人名と店名で「期限が異なる」という罠
この手続きで特に注意を要するのが、法人のケース。法人の商号(社名)を変更する場合、それに伴って各店舗の名称も一緒に変えることが多いはずですが、ここで非常に紛らわしいルールの違いが発生します。
・法人の商号(社名)の変更:事後の届出(20日以内)
・営業所の名称(店名)の変更:事前の届出(3日前まで)
つまり、同じタイミングでの名称変更であっても、法的には期限の異なる二つの手続きを同時に進める必要が出てくるわけです。「社名変更と一緒に事後報告でいいだろう」という思い込みは、店名変更の事前期限をいつの間にか過ぎてしまう最大の要因となります。
2. 正確な届出がブランドイメージを守る
「たかが店名を変えるだけ」と軽く考えるのは禁物です。実態と届出内容が食い違ったまま営業を続けることは、警察の立ち入り調査時に指摘を受けるだけでなく、古物台帳に記載する営業所名との整合性も問われる事態に繋がります。
警察官が巡回で営業所に立ち寄ったときに、未届出であることが指摘されるケースもありました。
新しいブランドとして再出発するからこそ、法的な裏付けは正確に整えておきたいところです。
3. ありがちな誤解
看板を変えた後に報告すればいい、は間違い
新名称での営業スタートから逆算して、事前に受理されていることが絶対条件です。
法人名を変えれば店名も自動で変わる、ではない
法人名(商号)と営業所名(店名)は、警察の管理上、別々の項目として扱われています。たとえ同じ名称に統一する場合であっても、それぞれに対して明確な変更届出が欠かせません。
4. 失敗しないための確認ステップ
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営業開始日の確定:新しい店名で営業をスタートする「日」を決定しましょう。ここがすべてのスケジュールの起算点となります。
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二つの期限を整理:法人名(商号)も変わる場合は、登記後の「事後届出(20日以内)」の準備も並行して進め、事前と事後それぞれの期限を管理しましょう。
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表記の完全一致を確認:ホームページ、看板、名刺等の店名表記が届出内容と1字1句違わず一致しているか最終確認を行いましょう。
屋号や店名の変更は、対外的なイメージ戦略として非常に重要ですが、古物営業法上の手続きもセットで考えなければなりません。特に社名変更が絡む場合は、届出のタイミングが二段構えになるため、自社での管理が非常に煩雑になりがちです。









