行政書士が解説!2025年10月施行・改正古物営業法の新ルール

2025年10月1日、古物営業法施行規則が改正されました。

この改正は、近年深刻化している金属盗難問題に対応するため、特定の金属製品の買取りに関する規制を強化するものです。

古物商事業者の皆様は、変更された内容を正確に理解し、日々の業務が新ルールに適合しているか確認する必要があります。

改正の概要

1万円未満取引の例外規定が変更に

今回の改正で最も重要な点は、「対価の総額が1万円未満の取引」における本人確認および帳簿記載義務の免除規定が、新たに追加された特定の金属製品には適用されなくなったことです。

これにより、対象品目を含む取引は、たとえ数百円といった少額であっても、法律で定められた正規の本人確認手続きと、帳簿への詳細な記録が義務付けられることになりました。

新たに本人確認義務の対象となった品目

規制強化の対象として、特に盗難被害が多かった以下の4品目が追加されました。

  • 電線
  • グレーチング(溝蓋)※金属製のものに限る
  • エアコンの室外機
  • 電気温水機器のヒートポンプ(熱交換装置)

グレーチングとは、側溝のフタなどに用いられる格子状のものです。コンクリート製のグレーチングは対象外です。また、電気温水機器のヒートポンプは、エアコンの室外機と形状などが酷似しているため、本人確認義務の対象になりました。

これまで、1万円未満の取引で本人確認が常に義務付けられていたのは、自動二輪車、ゲームソフト、CD・DVD類、書籍のみでした。今回の改正で、上記4品目が追加された形です。

改正規則の具体的な内容

今回の改正は、古物営業法施行規則第16条に定められた本人確認義務等の免除対象に、新たな例外品目を追加するものです。

本人確認義務の対象拡大

2025年10月1日以降、前述の4品目を買い受ける際は、取引価額にかかわらず、必ず本人確認と帳簿への記載を行うことが義務付けられました。

この変更は、盗まれた金属製品が換金目的で1万円未満の少額に分割されて持ち込まれるという犯罪手口を封じることを目的としています。

実務上の適用例

新しい規則が実際の取引でどのように適用されるか、具体的な例で確認します。

  • 取引例A:少額の電線の買取り顧客が廃品の銅線を少量持ち込み、買取価格が3,000円となった場合。
    • 求められる対応: 取引価額は1万円未満ですが、品目が「電線」に該当するため、例外なく本人確認と帳簿記載が必要です。運転免許証等の提示を求め、法律の要件に従って記録しなければなりません。
  • 取引例B:対象品目を含む混合商品の買取り顧客が古本(買取価格2,000円)と中古の空調設備の室外機(買取価格5,000円)を同時に持ち込み、合計買取価格が7,000円となった場合。
    • 求められる対応: 合計額は1万円未満ですが、取引品目に指定品目である「空調設備の室外機」が含まれているため、取引全体に対して本人確認と帳簿記載の義務が生じます。

事業者が遵守すべき義務

今回の法改正により、事業者は既存の法律で定められた本人確認と帳簿記載の義務を、新たな対象品目に対してもれなく適用する必要があります。

本人確認手続きの詳細

古物営業法で定められている本人確認方法は、対面取引と非対面取引で異なります。

  • 対面取引の場合: 運転免許証、個人番号カード(マイナンバーカード)、旅券(パスポート)、在留カードなど、相手方の氏名、住所、年齢が確認できる公的な身分証明書の提示を受けるのが基本です。
  • 非対面取引(インターネット経由、郵送買取等)の場合: より厳格な手続きが求められます。例えば、本人確認書類の写しを送付してもらい、記載された住所へ転送不要の書留郵便等を送って到達を確認する方法や、本人限定受取郵便を利用する方法、公的個人認証サービス(個人番号カードの電子証明書)を利用する方法など、複数の手段を組み合わせた確認が必要です。

帳簿記載の義務と保管期間

新たに追加された4品目を含む取引についても、古物台帳(帳簿)に以下の事項を正確に記載する義務があります。

  1. 取引年月日
  2. 古物の品目及び数量
  3. 古物の特徴
  4. 相手方の住所、氏名、職業及び年齢
  5. 本人確認のために用いた書類の種類と番号等

これらの取引記録は、法律により、取引のあった日から3年間の保管が義務付けられています。

法令遵守のための確認項目一覧

確認項目 確認結果
【手順1:品目確認】
□ 買取希望品は「電線」「溝蓋」「空調設備の室外機」「熱交換装置」のいずれかか?
□ 上記に該当する場合、取引価額に関わらず以下の全手順を実施する。
【手順2:本人確認】
□ 顧客に対し、公的な身分証明書の提示を依頼したか?
□ 提示された身分証明書が有効期限内であり、顔写真付きの場合は本人と一致することを確認したか?
【手順3:帳簿記載】
□ 相手方の「住所・氏名・職業・年齢」を聴取し、記録したか?
□ 本人確認に用いた書類の「種類・番号等」を記録したか?
□ 取引の「年月日」、古物の「品目・数量・特徴」を記録したか?

罰則および関連法規

古物営業法に定められた義務に違反した場合、事業者は厳しい行政処分および刑事罰の対象となります。

法令違反に対する罰則

  • 刑事罰: 本人確認義務や帳簿記載義務に違反した場合、「6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金」が科される可能性があります 1。無許可営業や名義貸しなどのより重大な違反には、「3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」が科される可能性があります 3
  • 行政処分: 公安委員会は、違反した事業者に対して営業停止命令や、古物商の許可そのものを取り消すことができます 。一度許可を取り消されると、その後5年間は再取得ができません 。

「金属盗対策法」との連携

今回の古物営業法の改正と並行して、2025年6月に「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(通称:金属盗対策法)」が成立しました 。

この法律は主に金属くず業者(スクラップ業者)を対象とし、本人確認の厳格化などを義務付けるものです 。

古物営業法の改正と連携し、盗品が古物市場と金属くず市場の双方に流れるのを防ぐ、包括的な規制網が構築されています。

法令遵守のための最終確認

今回の古物営業法施行規則の改正は、特定の品目を対象とした的を絞った規制強化であり、買取業務の現場に直接的な影響を及ぼしています。

事業者の皆様は、以下の点について自社の体制が新ルールに適合しているか、最終確認を行ってください。

  1. 社内手引書は改訂済みになっていますか?: 買取業務の内部規定が、新しい規則を明確に反映したものになっているか。
  2. 全従業員への研修は完了していますか?: 買取担当者全員が、対象品目を正確に識別し、新しい手続きを確実に実行できるか。
  3. 顧客向け告知物は設置されていますか?: 法改正の概要と協力のお願いを記した掲示物等が、顧客の目に触れる場所に設置されているか。
  4. 帳簿管理体制は法令要件を満たしていますか?: 帳簿が法令の要件を満たし、記録を3年間安全に保管できる体制が整っているか。

厳格な法令遵守は、犯罪の防止という社会的責任を果たすとともに、自社の事業の信頼性を高める上でも不可欠です。

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